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はっぴーさまーばけいしょん(サンプル)
2009-08-13 Thu 02:49
happy-summer-s.jpg
夏コミ発行/40P ひよ銀ちゃんのシリーズです。
以前に出したコピー本の前編に後編を書き足して一冊にまとめましたv







 唐突にその話が舞い込んだのは、僅か一昨日。
 夕方には体温を遥かに越える室温になる、西日の強い蛮のアパートで、ひよこの蒸し焼きが出来上がりそうになっていた8月上旬。
 うだるような暑さをはね飛ばすように元気いっぱいでやってきたマリーアは、いきなり銀次と蛮に向かって(正式には銀次に)、『田舎に行くわよっ』と言い出したのだ。
 暑さでついに頭がヤられたか?という蛮の悪態にはまったく耳をかさずに、マリーアは銀次をぎゅむと腕に抱きしめ、やわらかほっぺにちゅばっちゅばっと愛情のキスをして、きょとんとされるがままになっている銀次に言い含めた。
「あのね。田舎のおうちを貸してもらうことになったの。とーっても素敵なおうちなのよ」
「おうち?」
「そうよー。そこのおうちの人が旅行に行ってる間だけ、お留守番を頼まれたの。だから、タ・ダ! そこでー銀ちゃんは、ばぁばと一緒にすいか食べたり、花火したり、セミ採りしたり、川で遊んだりするんでちゅよ~!」
「はうっ!」
 すいか! 花火! 川っ! セミ…はともかくとして。
 頬を染めて、きらきらと目を輝かせる銀次に、マリーアがご満悦といった表情で微笑む。
 どんなところかははっきり言ってさっぱりわからないが、とにもかくにもマリーアが言うには、とても楽しいところらしい。
 どちらにせよ、銀次は裏新宿を出たことすらないのだから。それだけでも、どきどきわくわくしてしまう。
 なので、応えは二つ返事? かと思われたが。
「蛮ちゃー?」
「ん?」
「蛮ちゃ、は?」
「さあて? そっちのババアは、テメエと二人きりで行きてえんじゃねえの?」
「あら。蛮ったらヒガミ? やあねぇ、そんな意地悪しないわよ。蛮ももちろん、一緒に"連れてって"あげるわよ! ねっ、銀ちゃーん」
「ケッ」
「蛮ちゃ?」
 誰が行くかと怒鳴りかけたところで、ずいっと目前に来た大きな琥珀に見つめられる。
 まさか行かないとか言わないよね? オレだけ行ってこいとか、そんなこと言わないよね?
 と、でも言いたげな瞳に、うっと蛮が言葉に詰まる。
「蛮ちゃー」
 呼びかけは、おねだりたっぷり。小首を傾げるあどけないしぐさが、何とも愛らしい。
 どうして見かけ十六のオトコがこんなしぐさが出来るのか、甚だ疑問ではあるが。
 そして、どうして毎回毎回、あっさりそれに自分が陥落してしまうのか。それも著しく疑問ではあるが。(いや、それは愚問だろう、今更)
 どうにもこの表情の前では、蛮の意地もプライドもちっとも持続しやしない。今まで自身を保ってきたそれが、全く以って無意味なものだと思い知らされる。
 まあ、どうせ。クーラーのないアパートの蒸し暑い部屋で、干からびそうになっていたのは事実なのだ。
 田舎という限りは当然、都会のこのうだるような暑さからは解放されるということだ。
 それにたぶん間違いなく、銀次は喜ぶに決まっている。
 ――ならば。悪くねえだろう。
 自身をどうにか説き伏せ、眉尻を下げて、わかったと銀次に頷く。途端にぱあっと明るい笑みを浮かべ、銀次はうわーいっ!と歓声を上げて、蛮の首へと飛びついた。


 かくして。
2週間あまりの俄か田舎生活は、始まりを告げたのだった。



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