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溺愛カタルシス(サンプル)
2009-08-13 Thu 02:53
dekiai-katarusisu-s.jpg
夏コミ発行/BreathlessLoveシリーズ(たらし蛮) 
以前に出したやりにげさんとの合同誌より再録+書き下ろし/60P







 黒く重厚な扉を開くなり、目前は別世界のようなまばゆい光に包まれた。手をかざして、太陽の光を遮る。
 以前はこの明るささえ、蛮にとっては疎ましいものだった。
忌ま忌ましく思えた。
憎んだことさえある。
 このセカイにも、勿論神などいる筈も無いが。それでも地下に比べれば、たぶんずっとましなのだろう。
人にとっての本当の救いが、果たしてどちらに多くあるかは定かではないが。
それでも。
 此処には、蛮にとっての『すべて』がある。
 何一つ、この世で欲しいものなどないとそう思っていた自身が、激しい飢えと渇きの末にようやく手に入れたもの。



 歩道橋の上によく見知った輝きを見つけ、蛮の紫紺が安堵に細められる。
 なぜ、どうして此処にいるのかは判じないが、考えるまでもなく、足は真直ぐにそちらに向かった。
「ねえ、いいじゃん。ちょっとだけ、ねっ。じゃあ、お茶だけでもいいからさ、付き合ってよー」
 夕暮れ真近い歩道橋の上、ホストのような身なりの若い男が二人、金髪の少年相手に熱心に言い寄る声が聞こえてくる。
 どこの店のキャッチかと思えば、どうやらナンパされているらしい。
 やれやれ、またか。
 歩道橋の階段をゆったりと昇りながら、蛮が片目を眇めさせる。
 しかし何だってこうも。一人で待たせると毎度毎度、物の見事に数分で誰かに声を掛けられるのか。
しかも老若男女問わず、だ。
(圧倒的に若い男が多いということも、かなり気に入らない)
 いったい、どういうフェロモンを巻き散らかして、人を寄せ集めているんだか。

「行かない」

 ぴしゃりと言い返す口調は、抑揚なく。容赦なく。
「ねえ、そんなこと言わないでさぁ」
 それでも、まったく諦める気配なく、男が尚も細い肩を抱き寄せて言い寄ろうとする。が、その手は瞬時に金髪の少年の手によって、きれいに叩き落とされた。
蛮が、ヒュウ!と小さく口笛を吹き鳴らす。
「しつこいんだけど」
 長身の青年二人を見上げて、琥珀の瞳がきっとその顔を睨みつける。きつい表情。
 太陽に反射して輝く、黄金の髪。
 ついつい見とれてしまいそうになって、蛮はフ…と目を細めた。
 確かにひどくご執心だ。
わざわざ他人に指摘されるまでもない。
 そんな少年の容姿を褒めちぎって、さらに近づこうとした男たちが、少年の背後から近づいてきた蛮に気付くと、サッと顔色を変えた。
「お、おい、あれ…!」
「やべ…! み、美堂さん、じゃね…!?」
 まるで、そのヒソヒソと囁き合う声が聞こえたかのように、蛮が咥え煙草の口許にニヤリと凄みのある笑みを浮かべる。青年のきれいな顔が、瞬時に二人して引き攣った。
 そのまま少年の背後まで来ると、蛮がやおら細い首を抱くようにして、滑らかな首筋へと指を這わせる。驚いた琥珀が、はっと振り返った。やや視線を上げて蛮の顔を見る。
「よぅ、べっぴんさん」
 蛮の手が少年の肩を抱き寄せ、耳元に唇を寄せて、甘い低音を響かせた。
「そんなヤツらはほっといて、俺と遊ばねえ?」
 紫紺に真近で見つめられ、少年の頬が、どきりとしたように色づいた。見開かれた琥珀の瞳がゆっくりと細められ、口許に微笑が浮かぶ。俄に緊張を解いた身体は、応えるように蛮へと傾き、そっと体重を預けてきた。
「どうよ?」
 再度誘われ、軽く頬に唇を寄せられ、色づいた頬がさらにバラ色に染まる。
 だけども。
 ふわりとしたやわらかな微笑とともに返された台詞は、反して、かなりつれなかった。
「おことわり」
「あん?」
 途端に、蛮の片眉が自然と弓なりに持ち上がる。おいおいと内心で呟いた。
 この状況でふるか、普通。
 まったくこの野郎は、と思いはするけれど。浮かべた苦笑は、なぜだかどうにも甘ったるい。
 だが靡かないというのなら、それはそれで致し方ない。
「そいつぁ、残念だ」
 笑みを含んで、そう返す。肩を抱き寄せていた手をあっさりと引いた。
「あんた、かなり俺の好みだったんだがな。ま、残念だが、仕方ねえ。他を当たるか」
「え…」
 予想もしていなかった展開らしく、少年がきょとんと琥珀を丸くした。が、蛮はといえば既に少年に背を向け、橋の逆サイドへと向かって歩き出している。
 先程まで絡んでいた男たちの姿は、もう影も形も見えなかった。
 あっけにとられたように、去って行く蛮の背をぼーっと見送っていた少年が、やがて気付いてはっとなる。まるで、母親に置いてきぼりをくらった子供のように、慌てて後ろをついて歩き出した。すぐに小走りになる。

「蛮ちゃん、蛮ちゃん」

 やや慌てた声に呼ばれて、蛮が立ち止まり、振り返る。
同時に、追いついて来た少年が身体をぶつけるようにして、蛮の腕にしがみついた。




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