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「closed blue」サンプル
2010-06-23 Wed 18:16
6/27 蛮銀プチオンリー新刊
アーリーデイズな蛮銀です。

closed blue-s


 蛮の女性関係が華やかだという話は、どこからともなく銀次の耳に入ってきた。
 それはコンビを組んだ初日から、蛮の顔馴染みから、通りすがりの客引きの女から、そして蛮本人から。
 相当な女好きだという噂だ。一度に10人近く掛け持ちしていたこともあるとか。二股どころの騒ぎじゃない。
 女の方がほっとかねえんだよ、と、まるで武勇伝を語るように得意になって話してきかせる蛮に、よくそれで恨みをかって修羅場になったりしなかったものだと、銀次は呆れながら感心した。
 過去のことは、特に気にしない。誰にだって過去はあるのだ。さすがにそんな武勇伝は銀次にはないけれど、逆に出来れば知られたくない過去なら数えきれない程ある。
 相棒となった蛮に、それをずっと永遠にひた隠しにしておこうとは思わない。だけども、話す機会があるまでは、まだ良いと思っている。そして、それは『お互いさま』だとも。
 だから、もし何かあっても、話してくれるまでは聞かなくて良いと思う。
 過去は過去だ。大事なのは、今と、これからなのだから。
(でも……)
 とはいえ、溜息交じりに思う。
(気にはなるんだよね…)
 女性関係は特に。しかもそれが過去のものではなく、現在も進行中のものなら尚更。
(だってさ。邪魔したくないもんね…? 本当にそういうヒトなんだとしたら)
 塒は車、しかも助手席には常に銀次がいる。となると。やはり恋人との逢瀬には、ああいった手段しかないわけで。
(…ああいった、というのはその…。つまり、車の外で、あ、アウトドアっていうか。公園の奥の茂みとか、人気にない路地裏とか、そういうとこで…って、うわ、俺、もしかしなくても、既に十分邪魔してるんじゃあ…)
 想像すれば、邪魔はしたくないと言いつつ、既に大いに「馬に蹴られて」的な邪魔をしていることに気付き、銀次が愕然となる。
 まずい。さすがにこれは、まずいんじゃないのか。
「…まずい」
「は?」
「まずいよ、これって」
「あぁ?」
「うん、やっぱりこのままじゃ、まずい」
 しかし、確かにまずい事態であるからと言って、それをどう蛮に切り出したらいいんだろう。
「だったら、ソースかけりゃいいじゃねえ?」
「あ、そうか、うん、ソース……」
「…おい」
「そうか、そうだけど」
「食わねえのか?」
 まさか、お楽しみの時は言ってね、俺、気をつけるから。というのもあまりにも露骨で赤裸々過ぎて。
「おい! カミナリ小僧!」
「どわっ!」
「聞いてんのか、テメエ!」
「うわ、は、はい! お楽しみの時は…」
「は?」
「言ってね!! じゃなくて! じゃなくて!」
「はああ?」
 箸にエビフライを持ったまま、じたばたと大慌ての銀次に、ついに自分の脳ミソを電撃でシビレさせちまったのか?と呆れ顔で蛮が言う。
「つうか、テメエ。食うのか食わねえのかドッチだ!」
「……へ?」
 顔の前で怒鳴られて、やっと銀次が我に返る。
 そうだ。今日は天気が良いので、公園の芝生の上で弁当でも食うか?ということになったのだった。
 だけども、つい、蛮の女性関係のことに気を取られて。
「た、食べるっ、もちろん!」
「つうか、何、ゆでだこみてえに一人で真っ赤になってやがる? ま、テメエが食わねえんなら俺様が貰ってやるけどよ、おら寄越せ」
 無防備に箸に持ったままになっていた銀次のエビフライを、蛮の箸がひょいとあっさり奪い取る。
「はい? って、うわああ! 何で取るの、俺のエビフライ!」
「箸に持ったまま、いつまでも食わねえでいるからだろうが!」
「お箸に持ってるんだから食べるに決まってるでしょ! ってか、美堂くん! お箸からお箸っていうのは縁起が悪いんだよ!」
「どこの年寄りの説教ババアだ、テメエ」
「ていうか、そんなのどうでもいいから返してよ、俺のエビフライ~!」
「うるせえ、テメエのものは俺はモンだっての」
 言うが早いか奪い取ったエビフライを、蛮がぱくりと自分の口へと放り込む。銀次の絶叫が、真昼の公園に響き渡った。
「あああああ食べちゃったあ! 嘘、信じられない! 美堂くんのばかあ! 最後に取っておいたのにいいぃぃ!」
「おわっ、テメエ、エビフライごときで電撃トバしやがるんじゃねえ!」
「うるさい、美堂くんが悪いんだからね!! 返せ、俺のエビフライーーー!」
 言うが早いか芝生の上を、銀次の放った電撃が走る。蛮がそれをひらりとかわして、楽しげに身構えた。
「おぉ、やるかテメエ!」
「望むところだいっ!」
 結局。特に良い案も無いまま、蛮の女性問題の件は銀次の中で保留となった。



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